親名義の空き家を売却する方法とは?売却時の注意点も解説

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立石 天真

筆者 立石 天真

不動産キャリア15年

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親名義の空き家を売却する方法とは?売却時の注意点も解説

親が高齢者施設に入居したなどで実家が空き家になり、売却を検討している方もいらっしゃるでしょう。
空き家の名義が親になっている場合、たとえ子どもでも親の同意なしで売却することはできません。
今回は、親名義の空き家を売却する方法と注意点、親が認知症を患っている場合の対処法について解説します。

親名義の空き家を売却する方法

親名義の空き家を売却する方法

家や土地などの不動産は、原則として名義人本人しか売却できません。
家の名義が親になっており、子どもが代わりに売却を進めたい場合、なにかしらの対処が必要です。
親名義の空き家を売却する際は、親が存命か亡くなっているかによって対応が異なります。

親が存命であれば代理人として売却する

親が存命で問題なく意思疎通ができるのであれば、子どもが代理人となって家を売却できます。
ただし「代理人です」といえば認めてもらえるわけではなく、代理権を委任されていることを証明する委任状が必要です。
子どもがいくら代理人であると主張しても、委任状がなければ取引はおこなえません。
もし、親から実際には不動産の売却を任されておらず、子が独断で売却しようとしている場合、大きなトラブルになる可能性があるためです。
また、委任状があっても、それが偽造されたものでないかどうかを確かめるため、不動産の名義人である親に直接意思確認がおこなわれます。
なお、代理で空き家を売却しても、その売却代金は名義人である親に入金され、代理人のものにはならない点に注意しましょう。

親が亡くなっている場合は相続後に所有者となって売却する

亡くなった親から空き家を相続し、子どもが所有者として売却する方法もあります。
相続した親名義の空き家を売却するには、まずは親から子へ不動産の名義変更をおこなわなければなりません。
前述したように、たとえ実子であっても、親名義の不動産を勝手に売却することはできないためです。
相続後すぐに売却を予定している場合でも、一旦は相続人である子どもへ名義を変更する必要があります。
この名義変更の手続きは「相続登記」といい、これまでは任意だったものの、令和6年4月1日から義務化されています。
不動産の相続を知った日から3年以内に登記を済ませないと、10万円以下の過料が科される可能性があるためご注意ください。
相続登記の手続きは自分でもできますが、専門知識が必要なため、慣れていないと記入漏れや書類の不備が生じる可能性があります。
自分で手続きするのが不安な方や仕事などで忙しい方は、司法書士へ委任することをおすすめします。

親が認知症になった場合に親名義の空き家を売却する方法

親が認知症になった場合に親名義の空き家を売却する方法

親が施設に入居したのをきっかけに、空き家となった実家を売却したいという方もいらっしゃるでしょう。
親が認知症を患っている場合は、子どもが代理人として売却することはできません。
認知症の親に代わって子どもが家を売却する際は、成年後見制度の利用を検討することになります。
ここからは、成年後見制度の概要と種類について解説します。

成年後見制度とは

成年後見制度とは、判断能力が低下した方の財産を保護し、生活上の安全や健康を守るためのサポート役を選任する制度です。
平成12年4月1日からスタートし、認知症対策として活用されています。
本人をサポートする方を「後見人」といい、後見人は本人に不利益が及ばないように保護する役割があります。

法定後見と任意後見の2つに大別される

成年後見制度には「任意後見制度」と「法定後見制度」があります。
親が認知症になってしまった時に利用するのが法定後見制度、認知症対策として活用するのが任意後見制度です。
任意後見制度
任意後見制度とは、本人に十分な判断能力があるうちに「本人自ら」が後見人を選ぶ制度です。
あらかじめ後見人を選んでおけば、自分が認知症になった際に、後見人が不動産売却をおこなえます。
後見人になるのに特別な資格は必要はなく、家族や親族、友人などご自身が信頼できる方に依頼できます。
権限内容についても、本人の状態やニーズに応じて、柔軟にサポート内容を決めることが可能です。
法定後見制度
法定後見制度は、判断能力がない本人に代わって、家庭裁判所が後見人を選ぶ制度です。
任意後見制度とは異なり、ご自身で後見人を選ぶことができません。
本人に代わって財産管理という重い責任を負うことになるため、弁護士や司法書士などの専門家が選ばれることもあります。
また、後見人などの権限内容は民法で定められており、任意後見制度のような柔軟性はありません。
仮に成年後見制度が認められたとしても、親名義の家を売却するには家庭裁判所からの許可が必要です。
法定後見制度においては、本人(被後見人)の利益になることしかしてはならないという決まりがあるためです。
家の売却が被後見人の利益にならないと判断されれば、後見人であっても不動産売却はおこなえません。
このように、法定後見制度は任意後見制度に比べると柔軟性が低く、自由に後見人を選べないなどのデメリットがあります。
確実に売却を進めたいのであれば、親の判断能力があるうちに任意後見制度を利用するのが望ましいでしょう。

親名義の空き家を売却する際の注意点

親名義の空き家を売却する際の注意点

親名義の家は、通常の不動産よりも売却における注意点が多く存在します。
スムーズな売却を目指すためにも、最後に親名義の家を売却する際の注意点を確認しておきましょう。

注意点①売却前に境界線確認を済ませておく

相続などによって取得した古い家は、隣地との境界が曖昧になっていることも珍しくありません。
境界がハッキリしない状態で売り出すと、買主が隣地所有者とトラブルになる可能性があります。
リスクのある不動産を進んで購入したいと思う買主はおらず、また売却できたとしても大幅な値下げが必要になるでしょう。
土地の境界は、法務局が管理する登記事項証明書や地積測量図で確認できます。
境界が確定していない場合は、国家資格を持った土地家屋調査士立ち合いのもと、境界確定測量をおこないましょう。

注意点②売却時期を見極める

親名義の空き家は、いつ、どのように売り出すかも重要です。
親が存命であれば、贈与を受けてから家を売却する方法もありますが、その方法では贈与税が課される点に注意が必要です。
親が亡くなってから相続を通じて家を手に入れた後に売却するケースでは、特例などの利用によって税負担を軽減できます。
しかし、相続後の売却は相続人全員の同意が必要なため、相続人が多いと意見が合わずトラブルになる恐れがあります。
親名義の家を売る際は、税金面の負担や相続人との関係などを考慮して、最適なタイミングと方法を選ぶようにしましょう。

注意点③契約不適合責任に注意する

契約内容と一致しない家を引き渡した場合、売主は「契約不適合責任」を問われる恐れがあります。
契約不適合責任とは、実際に引き渡した不動産が契約内容と一致しない場合に、売主が負う責任のことです。
たとえば、家を売却したあとに、契約書には記載されていない雨漏りが発覚したとします。
この場合は、たとえ物件を引き渡した後であっても、売主が雨漏り箇所の修繕費用を支払わなければなりません。
場合によっては、損害賠償や契約解除を請求される可能性もあるため、家の状態はしっかり把握したうえで売却を進めましょう。

まとめ

たとえ血の繋がった子どもでも、親名義の家を簡単に売却することはできません。
代理人または相続後に所有者となって売却するか、成年後見制度を利用して売却するかになります。
どの方法で売却したら良いかは、ご自身や親の状況、相続人との関係などを考慮したうえで慎重に判断しましょう。


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