相続の単純承認とは?手続きの方法や単純承認と見なされるケースを解説

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立石 天真

筆者 立石 天真

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相続の単純承認とは?手続きの方法や単純承認と見なされるケースを解説

親などが亡くなり相続が発生すると、土地や建物、預貯金などは相続人が取得することになります。
しかし、相続人だからといって、必ずしも財産を継承しなければならないというわけではありません。
また、財産の取得方法にもいくつかの種類があります。
今回はそのなかの一つ、単純承認とはなにか、手続きの方法や見なされるケースについて解説します。
土地や建物の相続を予定している方は、ぜひ参考になさってください。

相続における単純承認とは?

相続における単純承認とは?

まずは、単純承認とはどのようなものなのかについて解説します。

単純承認とは?

単純承認とは、親などが所有していたプラスの財産とマイナスの財産を、分け隔てなくすべて取得することです。
マイナスの財産のほうが多かった場合、相続人の預貯金から不足分を補うことになります。
たとえばプラスの財産が2,000万円の預貯金で、借り入れ金が3,000万円の場合、2,000万円の財産を受け取ることが可能です。
しかし、借り入れ金である3,000万円を、親の代わりに返済しなければなりません。

限定承認との違いとは?

限定承認とは、プラスの財産の範囲内で、マイナスの財産を取得する方法です。
たとえば親の財産が3,000万円で借金が5,000万円あった場合、相続人が負担すべき金額は3,000万円です。
返済できなかった部分に関しては、債権者は支払いを求めることができません。

相続放棄との違いとは?

相続放棄とは、被相続人が所有していた、プラスの財産もマイナスの財産もすべて放棄することです。
はじめから相続人ではなかったことになるため、借り入れ金などの支払い義務も生じません。
ただし、土地や建物などの不動産や、預貯金なども継承できなくなります。

選ぶメリットとデメリット

選ぶメリットは、手続きが比較的簡単なところです。
親が亡くなると、子どもはさまざまな手続きに追われ、忙しい日々を過ごすことになります。
そのようななかで、財産の取得についての手続きがスムーズにおこなえるのは、大きなメリットとなるでしょう。
一方、デメリットはすべての財産をそのまま取得してしまうことです。
マイナス財産がプラス財産を上回った場合、相続人が残りの借金などを抱えてしまうことになります。
そのため、マイナス財産がある場合は、慎重に判断しなければなりません。
親がどのような財産を所有していたのか、詳しいことがわからない状態で、単純承認を選ぶのは大きなリスクを抱えることになります。

相続で単純承認を選んだ場合の手続きの方法

相続で単純承認を選んだ場合の手続きの方法

続いて、単純承認を選んだ場合の、手続きの方法について解説します。

必要な手続きはある?

結論から申し上げますと、単純承認を選んだ場合、特別な手続きは不要となります。
親などが亡くなった場合、相続人は親が亡くなったことを知った日と、ご自身が相続人であることを知ってから、3か月以内に財産の取得方法を選択しなければなりません。
選択肢は、単純承認と限定承認、相続放棄の3つです。
3か月以内に相続放棄または限定承認がされなかったり、期間の延長がなかったりした場合は、自動的に単純承認となります。
先述のとおり、選ぶメリットは、手続きが比較的簡単なところです。
必要な書類を準備したり記入したり、提出したりといった手間がかからないので、手続きの仕方で悩むことはありません。

選択すべきケースとは?

単純承認は、一般的に用いられる財産の取得方法です。
プラスの財産がマイナスの財産が多いことがすでに把握できており、取得したくない特別な理由がないときに適しています。
プラス財産からマイナス財産を差し引いた、残りの財産を、相続人全員で平等に分割するのが良いかもしれません。
一方で、マイナス財産のほうが多い場合や、プラス財産とマイナス財産どちらが多いか把握できない場合は、相続放棄と限定承認を選択肢の一つに入れておくべきといえます。

プラスの財産とマイナスの財産はどのようなものが該当する?

プラスの財産に該当するものとして、下記が挙げられます。

●現金や預貯金、外国通貨など
●不動産(親が住んでいた建物と土地、賃貸用として収益を得ていた建物と土地、店舗や田畑、空き地など)
●動産(自動車や家具、宝石や宝飾品、絵画や骨とう品など)
●借家権や借地権、慰謝料請求権や損害賠償請求権などの権利
●債権(売掛金や貸付金、財産を受け取る方が受取人になっている、生命保険金の請求権など)


マイナスの財産に該当するのは、主に下記のものです。

●借り入れ金(カードローン、クレジットカードの未払い分、消費者金融からの借金など)
●固定資産税や都市計画税、住民税や所得税などの未払いの税金
●未払いの医療費や電気代、ガス代や水道第などの光熱費
●未払いの家賃や土地の代金
●慰謝料や損害賠償金で未払いとなっているもの

相続で単純承認として見なされるケース

相続で単純承認として見なされるケース

最後に、単純承認として見なされるケースについて解説します。
先述のとおり、3か月以内に相続放棄または限定承認がされなかったり、期間の延長がなかったりした場合は、自動的に単純承認を選択したことになります。
しかし、法律によって一定の行為をおこなった場合、法定単純承認と見なされるケースがあるため注意が必要です。
法定単純承認とは、財産を取得する方の意思に関係なく、単純承認とする制度です。

見なされるケース1:財産を処分したとき

見なされるケースとしてまず挙げられるのが、財産を処分した場合です。
財産を取得する権利を持つ方が、親の財産のすべてもしくは一部を処分すると、単純承認を選んだと見なされます。
「処分した=相続する」という、相続人の意思表示と判断されるからです。
処分に該当するものは、相続財産の現状を変更したり、法律上の変動を生じさせたりする行為を指します。
たとえば、預貯金がある親の口座を解約したり、土地や建物を売ったりした場合です。

見なされるケース2:3か月以内にほかの方法を選択しなかった場合

3か月以内にほかの方法を選択しなかった場合も、見なされるケースです。
先述のとおり、3か月以内に相続放棄したり限定承認がされなかったりした場合、自動的に単純承認を選択したことになります。
これは、期間の経過によって見なされるケースです。

見なされるケース3:財産を故意にたり消費したりした場合

見なされるケースとして、故意に財産を隠したり消費したりした場合も挙げられます。
たとえば、親の預貯金を引き出し、すべて使ってしまった場合などです。
また、財産の存在を隠すために、目録にわざと記載しなかった場合も該当します。
目録とは、親の所有していた財産の内容(プラスもマイナスも)を、一覧表にしたものです。
一般的には遺産分割協議(財産の取得割合や方法を、全員で話し合うこと)の際に作成します。
限定承認や相続放棄をしたあとに隠蔽が発覚すると、その方法は無効となるため注意が必要です。

まとめ

単純承認とは、親などが所有していたプラスの財産とマイナスの財産を、分け隔てなくすべて取得することです。
特別な手続きは不要で、3か月以内に相続放棄または限定承認がされなかったり、期間の延長がなかったりした場合は自動的に単純承認となります。
法律によって一定の行為(財産を処分したり3か月以内にほかの方法を選択しなかったりした場合)をおこなうと、財産を取得する権利のある方の意思に関係なく、単純承認と見なされるケースがあるため注意が必要です。


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